2010年7月3日土曜日

胎児と癌の違い (2010:8:9更新)

癌と胎児の違いです。癌タイジのお話ではありません。
結論から先に言いますと、身体の自己から見れば兄弟の様なもので大差は在りません。
胎児は半分他人で大きい移植片ですが、自覚症状としての緩やかな拒絶反応(つわり)がある分癌より良心的と言えるでしょう。癌の発育に自覚症状も伴わず、免疫に排除され無い理由としては、胎児が母親の免疫システムからの攻撃を受けないようにする仕組みと同じです。つまり胎児は自分の標識HLA(人白血球抗原:一致するのは一卵性双生児ぐらい)を胎盤が隠して母親の免疫システムから胎児の身を守るのです。免疫詳細は下記『免疫の働き』参照
HLAの無い細胞は自然免疫に攻撃されますから、自然免疫にたいしては胎児由来に発現するHLAーG(抗体)と言う免疫抑制を胎盤が生成して母親の自然免疫から退治を守ります。

で、癌はと言いますと、まだ免疫が完成されていない胎児の時から腸粘膜などに幾つかの癌抗原を作り、すでに自己としていたのですから、癌に対する免疫の機能は働きません。胎児性癌抗原と呼ばれるものが此れです。食道ガン、胃ガン、結腸ガン、直腸ガン、膵ガン、胆道ガン、肝細胞ガン、肺ガン、子宮ガン、卵巣ガン、尿経路ガン、肉腫、白血病などは免疫を期待する事は出来ません。元々、胎児の頃から自己としていた訳ですから。見境の無い凶暴な自然免疫(NKキラー)からでさえ逃走する訳ですから、もう、とても手に負えません。

免疫だけではありません。胎児が作る新生血管も、癌が転移していく為に癌が作る新生血管(癌細胞が血流に乗って転移する為に癌は新しい血管を作り末梢血管等に接続します)も同じ因子(VEGF)が関与します。リンパ管もやはり同じです。胎児と癌は同じ様に成長してゆきます。

免疫力や免疫量(数)を論議する以前に、身体の自己が如何に癌の存在を認識するかが大きい問題と思います。それとも、癌の逃走をワザと黙認する様に人体は出来ているのかも知れませ
ん。私にはそれなりの理由がありますが・・・。
そう言う訳ですから、人間の身体は繁殖を優先しています。


『免疫の働き』    免疫学のパラダイムシフトがあります。サップレッサーTの存在及びシステムが大きくかわりました。いずれ更新します。(2012/9/8)

血液中にある白血球の内容を説明します。
白血球=好中球50~70%の顆粒球(主に細菌対応)+好酸球2~5%顆粒球(主に寄生虫対応)+好塩基球1%顆粒球(対応不明)+リンパ球20~40%(主にウイルス 癌対応)+単球3~6%マクロファジー+樹状細胞に分かれます。リンパ球は更にB細胞(骨bone)とT細胞(胸腺thymus)
に分けられます。
更にT細胞はヘルパーT、キラーT、サプレッサーT、と大きく3つの細胞に分けられます。

さて、此処からですが、ウイルスが身体に進入進入してきた場合は次のプロセスでウイルスを
絶滅させて身体を守ります。

ウイルス進入 → 細胞転写(感染)自然免疫マクロファジー発動 → 抗原提示(マクロが食べて消化した断片糞をペプチドと言います) → ヘルパーT細胞がサイトカイン(インターロイキン)を放出(攻撃指令)→ キラーT細胞がウイルスに転写(感染)した細胞を攻撃 → ウイルスが感染細胞から逃走 → B細胞(液性)やマクロファジーがウイルスを殺傷し
ます。

免疫の反応停止機能です。自己免疫反応を防止させる意味からも、無くてはならない機能です。
1)マクロファジーやB細胞からの抗原提示(ペプチド)を受けたヘルパーT細胞は、もし自   
  己抗原であれば攻撃指令を与えません。(CD86とCD28の機能)
2)ヘルパーT細胞の攻撃指令はタイマーで管理されれいてタイムアップすれば、攻撃命令を 
  発令しません。(CTLA-4機能)

3)サプレッサーT細胞の出動です。T細胞の抑制インターロイキン(IL10)やTGF-β  
  の放出でキラー細胞を制御させるのですが、現在ではやや疑問視されています。
  ヘルパーT細胞には仲が険悪な2種類のT細胞が確認されていて、(Th1、Th2)の
  バランス論が優勢です。

細胞免疫はマクロファジーの抗原提示でヘルパーT細胞を発動させキラーT細胞を活性化させます。液性免疫はマクロファジーの抗原提示を受けてB細胞を発動させ抗体を作り記憶します。所謂免疫です。

マクロファジーと共に先天的にある免疫を自然免疫NK(Natural Killer)と言います。T細胞とかは後天的に出来る免疫なので獲得免疫と区別されています。

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